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今日は、ちょっと早めに起きて顔を洗い。家を後にする。 いつもの場所に紗奈ちゃんを見つけてほっとする。 「せんぱーい。」 「おはよう。紗奈ちゃん。」 おれはMTBから降りる。 「あの、ごめんね。ひどいことしちゃって。」 「いえ……もう大丈夫なんですか。」 「うん。」 「そうですか……よかったぁ。」 紗奈ちゃんの表情が崩れる。 「もう……本当に心配だったんですから……」 そう言う紗奈ちゃんの目にはうっすらと涙がにじんでいる。 「ご、ごめん。本当にごめんね。」 「……もう……嫌われたのかと思ってました……」 「そんことないよ。本当にごめん。」 「でも、よかったです……」 落ち着きを取り戻した紗奈ちゃんとならんで学校への道を歩き出す。 晴れた空に気持ちいい風が吹いている。 学校に着くと紗奈ちゃんと別れ、教室に向かう。 ドアを抜けると、のぞみの方へと歩いて行く。 「のぞみ。」 「あっ。結城。」 「ごめんな。心配してくれたのに。」 「いいの。気にしてないから。」 「それに早退の報告までしてもらって。」 「だって、結城が言うより、わたしが言った方が信憑性あるしね。」 「ありがとう。」 「うん。気にしないで。パフェでいいから。」 おれはその言葉に思わずふきだしそうになる。いつもののぞみでよかった。 「うん。今度おごるよ。」 おれはのぞみと別れると風霧の机に向かう。 「風霧……」 「結城か……」 「その……怒ってるよな?」 「そ、そんなことはない。」 「だって、メールも返ってこなかったから……」 「そ、それは、メールや電話ではうまく話せる気がしなかったから……」 「そっか……ごめん。風霧を避けるようなまねをして。」 「い、いや、いいんだ。わたしが結城の気分をそこねたかと思っていた。」 「ごめん。本当に悪いことをしたと思ってる。」 「わたしは……気にしてない。」 「そうか、よかった。」 「なにがあったのかは知らないが……もしできることがあれば言ってくれ。」 「うん。ありがとう。」 おれは、風霧の笑顔にほっとする。今はまだ、思っていることを話せないけど、いつかきっと話そうと思う。 自分の席に向かうと、机にはりついたままの一夜が声をかけてくる。 「おう。来たか。」 「サンクス。お前のおかげで助かった。」 「なーに、気にするな。おれの力じゃない。」 「いや、お前のおかげだって。」 「そうかぁ?お前の後ろに、大きな胸をした天使が見えるけどな。おれは。」 「お前、なんで……」 「おれの能力をなめちゃいかんよ、君。」 (……こいつ、本当に人の心が読めるのか?……) その時、ざわつく教室にチャイムの音が鳴り響いた。 ………………………… ……………… …… 昼休みになると、紗奈ちゃんの教室へ向かう。 「今日もやつが立ち上がりましたな。」 「そうですな。」 「昨日は奴がいなくて困りましたな。」 「奴がいなければ文句をいう相手もいませんからな。」 「しかし、それは……もしかすると、我々は奴を好きなのではありませんかな?」 「ちょっと、木下さん。それは違うでしょう。」 男子ABCもおれのことを気にしてくれていたらしい。 紗奈ちゃんと空いた教室を見つけてお弁当を食べる 久しぶりに話がはずむ。 「あっ、そういえば気になったんだけど……」 「なんですか?」 「先週の金曜日だけど、紗奈ちゃん、本当に日直だったの?」 「えっ、それは……」 「なんだか変だった気がして。」 「えっと……ごめんなさい。嘘でした。」 「やっぱりそうなんだ……あの、紗奈ちゃん。言いたいことがある時ははっきり言ってね。おれ、鈍いからそういうのわかんないし。」 「はい。今度からそうします。」 「うん。」 「あの後、絢音さんに言われて反省したんです。」 「そうなんだ。おれも昨日、絢音さんに話を聞いてもらったんだけど。」 「はい。知ってます。バイトの時に聞きました。」 「そうなんだ……じゃあ一緒だね。」 「はい。」 笑顔で話す紗奈ちゃんを見ていると心が落ち着く。 「あの、先輩。今日の放課後はどうしてますか?」 「あっ、今日は家で夕飯を食べようと思って。今回の事でかーさんにも結構心配かけちゃったし……紗奈ちゃんは金曜日もバイト?」 「はい。」 「じゃあ、明日も無理か……土曜日は?」 「空いてます。」 「じゃ、どこか行こうか。」 「はい。」 そんな会話をしながら昼食を食べる。久しぶりに2人でゆっくりとお茶を飲んで教室へ戻る。 |
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