7月3日(土)


.    ピピピピピッ……

(さて、行きますか。)

今日もあくびを噛みころしながらいつもの道を下っていく。

紗奈ちゃんを見つけて、自転車を降りる。

「おはよ。」

「おはようございます、先輩。」

心なしか紗奈ちゃんの表情が冴えないような気がする。

「どうしたの?元気ないね。」

「えっ?そ、そんなことないです。」

紗奈ちゃんはあわてて普段の表情になる。

「なにかあった?」

「いえ、なんでもないです。あの、先輩。今日の放課後なんですけど……」

「うん。どうしようか?」

「うちでご飯を食べませんか?」

「いいの?」

「はい。先輩はなにが食べたいですか?」

「食べたいものか……うーん……カツ丼。」

「カツ丼ですか?」

「うん。最近食べてないから。妙に食べたくなって。でも、難しいかな?」

「あっ、もし油で揚げないでもいいなら……」

「揚げないでカツができるの?」

「はい。オーブンでもできるんです。」

「へー。そうなんだ。」

「でもお買い物がまだなんで、少し遅くなりますけど……」

「うん。いいよ。学校の後買いに行くの?」

「はい。」

「じゃ、おれも行くよ。」

「いいんですか?」

今日初めて紗奈ちゃんの顔が明るくなる。

「うん。一回家に戻って着替えてくるから、ちょっと待ってもらわないといけないけど。」

「はい。」

「じゃ、そうしよう。」


…………………………

………………

……


一限目が終わる。

「おーい。風霧。」

おれは風霧の机に近づき声をかける。

「どうした?結城。」

「わるい。今日も剣道部に顔を出せそうにないんだけど。」

「そうなのか?」

「うん、すまない。」

「いや。気にすることはない。今日は、そもそも練習がない。」

「そうなのか?」

「ああ。今日は練習試合で他校に出向くことになっている。」

「そうなんだ。」

おれが答えた時、木村が近づいて来くのが見える。

「まあ、結城が試合を見に来てもいいんだけどな。」

「試合をか?」

「そう。どうだ?来ないか?見てるだけでもそれなりに楽しいぞ。」

「今回は遠慮しておくよ。」

「そうか。」

おれは二人を残して席に戻る。

「なんだぁ、結局は三日坊主か。」

半分目を閉じた一夜が言う。

「まだ辞めると決めたわけじゃないぞ。」

「だってお前、デートのために部活をさぼるんだろ?」

「ぐっ。」

「そういう奴を三日坊主っていうんだ。昔から。」

(くっ、嫌なことを)

「それにしても、遊馬。ひとつ疑問なんだがな。」

「なんだ?」

「三日坊主ってのは、二日やって三日目にやめることなのか、三日やって四日目にやめることなのか、どっちだと思う?」

「おれにわかるわけないだろ……」

「そうか、どうにも疑問なんだが……」

「帰って辞書でも引けばいいんじゃないか?」

「ところがだ、広辞苑にも載ってないのよ、これが。」

今日も無駄話で休み時間がふけていく。




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