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ピピピピピッ…… (さて、行きますか。) 今日もあくびを噛みころしながらいつもの道を下っていく。 紗奈ちゃんを見つけて、自転車を降りる。 「おはよ。」 「おはようございます、先輩。」 心なしか紗奈ちゃんの表情が冴えないような気がする。 「どうしたの?元気ないね。」 「えっ?そ、そんなことないです。」 紗奈ちゃんはあわてて普段の表情になる。 「なにかあった?」 「いえ、なんでもないです。あの、先輩。今日の放課後なんですけど……」 「うん。どうしようか?」 「うちでご飯を食べませんか?」 「いいの?」 「はい。先輩はなにが食べたいですか?」 「食べたいものか……うーん……カツ丼。」 「カツ丼ですか?」 「うん。最近食べてないから。妙に食べたくなって。でも、難しいかな?」 「あっ、もし油で揚げないでもいいなら……」 「揚げないでカツができるの?」 「はい。オーブンでもできるんです。」 「へー。そうなんだ。」 「でもお買い物がまだなんで、少し遅くなりますけど……」 「うん。いいよ。学校の後買いに行くの?」 「はい。」 「じゃ、おれも行くよ。」 「いいんですか?」 今日初めて紗奈ちゃんの顔が明るくなる。 「うん。一回家に戻って着替えてくるから、ちょっと待ってもらわないといけないけど。」 「はい。」 「じゃ、そうしよう。」 ………………………… ……………… …… 一限目が終わる。 「おーい。風霧。」 おれは風霧の机に近づき声をかける。 「どうした?結城。」 「わるい。今日も剣道部に顔を出せそうにないんだけど。」 「そうなのか?」 「うん、すまない。」 「いや。気にすることはない。今日は、そもそも練習がない。」 「そうなのか?」 「ああ。今日は練習試合で他校に出向くことになっている。」 「そうなんだ。」 おれが答えた時、木村が近づいて来くのが見える。 「まあ、結城が試合を見に来てもいいんだけどな。」 「試合をか?」 「そう。どうだ?来ないか?見てるだけでもそれなりに楽しいぞ。」 「今回は遠慮しておくよ。」 「そうか。」 おれは二人を残して席に戻る。 「なんだぁ、結局は三日坊主か。」 半分目を閉じた一夜が言う。 「まだ辞めると決めたわけじゃないぞ。」 「だってお前、デートのために部活をさぼるんだろ?」 「ぐっ。」 「そういう奴を三日坊主っていうんだ。昔から。」 (くっ、嫌なことを) 「それにしても、遊馬。ひとつ疑問なんだがな。」 「なんだ?」 「三日坊主ってのは、二日やって三日目にやめることなのか、三日やって四日目にやめることなのか、どっちだと思う?」 「おれにわかるわけないだろ……」 「そうか、どうにも疑問なんだが……」 「帰って辞書でも引けばいいんじゃないか?」 「ところがだ、広辞苑にも載ってないのよ、これが。」 今日も無駄話で休み時間がふけていく。 |
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